第11報 易酸化LDLの測定

第1報から第10報まででお話ししたのは、主に中性脂肪とコレステロールを含んだリポタンパク質の生成とその代謝であり、体内で中性脂肪やコレステロールが単独で存在できないことは良くご理解して頂けたことと思います。ここで新しく出現した言葉として第3報・第5報で述べた「易酸化LDL」 があります。これは読んで字のごとく酸化したLDLではなく、あくまでも酸化しやすいLDLです。酸化したLDLは直ちにマクロファージに貪食され測定できないと書きました(第6報)がこれは体内の血流中のできごとです。

しかし血液検査は採血後すぐ遠心分離装置で血漿と血清に分けられ保冷されますので、血球やマクロファージなどは血漿部分に分離され血清に残っていません。従って採血後血清に分離された検体には、第8報で述べたアボEやアポBのC末端が露出したままの易酸化VLDLとLDLが残ります。

採血後の血清に易酸化VLDLとLDLが残る理由
組織の細胞は中性脂肪やコレステロールが不足すると、盛んにLPLやLDL受容体(レセプター)を増産し中性脂肪やコレステロールを取り入れますが、腹一杯になればその鍵穴を閉じます(第9報の鍵穴)。しかし化学反応の間隙(タイムラグ)でアボEやアポB100のC末端が露出したままの易酸化VLDLとLDL(活性化LDL)ができますが、直ちに細胞のLDLレセプターに捕らえられます。しかし採血後の血清には細胞付属のレセプターがありませんから易酸化LDLは残ります。これが血清を37℃に温めた時に残っているリパーゼでLDL粒子を小型化します。因みに第15報で述べるⅡa・Ⅱb型脂質異常症のFH患者らは遺伝的に易酸化LDLが溜まりやすい体質なのでこのインキュベーションで小型化されます。

我々は第7報で述べた特許で前記易酸化VLDLとLDLおよび、ちぎれたLPLが残っている血清検体を2つに分割し一方を37℃2時間インキュベーションし、それぞれポリアクリルアミドゲルディスク電気泳動(PAGE)法で電気泳動してその変化を観察しました。

インキュベーションすることでちぎれたわずかなLPLがVLDLとLDL(易酸化VLDLとLDLを含む)を水解してVLDLやLDL粒子を小さくします。なぜなら、採血後の血清中には組織の細胞が無くLDL受容体(レセプター)がありませんからアポBのC末端が露出した易酸化VLDLやLDL等が残っておりそれがポリアクリルアミドゲルディスク電気泳動(PAGE)法のパターンとして観察できるからです。

言い換えれば血液中では易酸化VLDLやLDLを見ることができないが、採血後の血清ではそれがポリアクリルアミドゲルディスク電気泳動(PAGE)法で可視化できるのです。

驚くべきことに心筋梗塞を起こした患者の検体と健常者のポリアクリルアミドゲルディスク電気泳動(PAGE)法の結果に大きな違いがあることを発見し、特許登録されました(特許第6454950号)。世界唯一の測定法です。

(データは特許第6454950号より転載)

この表は心筋梗塞を起こしたFH患者の血清を37℃2時間インキュペションした前後のポリアクリルアミドゲルディスク電気泳動(PAGE)法の測定結果を集計したものです。

測定値をF式を用いてLDLコレステロール値に換算し比例配分で小粒子LDL(sLDLまたはsdLDL)値を求めました。注目すべき点はTC, TG, HDLcの値は殆ど変わらないが、小粒子LDL(sLDLまたはsdLDL)の値はインキュベーション前に比べ倍になっている点です。健常者群では37℃2時間インキュベーション前後の差は殆どないからこれは易酸機化LDLの有無によって発生した現象と判断しました。

この37℃インキュベーション前後の(sdLDL)値の増加は2025年松尾らの報告によっても確認されています(参考文献)。

参考文献
Keisuke Matsuo, Ikuo Inoue, Takehide Matsuda, Takahide Arai, Shintaro Nakano : Relative increase in production ratio of small dense low-density lipoprotein in acute coronary syndrome with high coronary plaque burden : an exvivo analysis ; Heart and Vessels Vol.40,No.(1):26-35,2025

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第11報 易酸化LDLの測定
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第2報 リポタンパク粒子とは何者か?
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