既にお気づきの方もおられると思いますが、電気泳動像は写真のみを見て診断をすることは殆ど行われていません(遺伝子のパターン解析等を除く)。
一般的には泳動像を波形化してその分画%値を計算するか検量線を作成して物質の濃度値を求める事になっています。その根拠は日本工業規格(JIS)が定めている吸光光度分析通則(JISK0115:2022)に詳しく書かれています。
これによりますと吸光度が1.0を超えるものは吸光光度分析通則適用外となっています。
さてこの原理原則を超えた場合どうなるか良く知られていません。
既に本ホームページで紹介した第13報のポリアクリルアミドゲルディスク電気泳動(PAGE)法は直径約7mmのガラス管にポリアクリルアミドゲルを充填した支持体を使用してリポタンパク質を分離分析する方法であり、分離結果がシャープでかつ粒子サイズの順に分析される反面、分離されたパターンに透過性がない部分があり前出の吸光光度分析通則(JIS K0115:2022)の適用外になります。
すなわち不透明なバンドの吸光度の波形は無限大になります(吸光=-logT 、T:透過率)。
そのため我々はこの不透明な部分を持つポリアクリルアミドゲルディスク電気泳動(PAGE)法のデンシトメトリーに吸光光度分析通則(JIS K0115:2022)は使用できないと判断し、新しい写真からの濃度測定法を発明(特開2004-258014)して特許を取得(特許第4211463号)後実用化しました(参考文献1)。
参考文献1 : 久保田亮、鴻上繁、松田武英、福島功平、保坂俊明、芝紀代子: CCDカメラで撮影した電気泳動像の解析-光学式濃度計との比較
この写真からの濃度測定法を用いることにより、1970年WHOが公表した脂質異常症の判定法のアルゴリズムが世界で初めて完成し実用化できました(本ホームページ第14報、第15報)。
この事実は1991年発行された高脂血症診療のてびき(厚生省・日本医師会編)にポリアクリルアミドゲル(PAG)E法の濃度図(波形)が示されていないことで確認できます。
言い変えればこの写真からの濃度測定法を使用しなかった2010年以前のPAGE法のWHO型判定結果は間違っていた可能性が否定できません(但しIDLや小粒子LDLの出現を調べる目的にはPAGE分析法が良い点で優れていたことは否定できないことを補足しておきます)。
ところで2019年に脂質異常症の改変WHO型判定法のアルゴリズム (本ホームページ第15報)以降は前記吸光光度分析通則(JIS K0115:2022)を用いる光学式濃度計による脂質異常症の改変WHO型判定法は使えなくなくなっています。
実際にポリアクリルアミドゲルディスク電気泳動(PAGE)法に前記光学式濃度計を使用した場合の不具合点を下記図に紹介します。
ポリアクリルアミドゲルディスク電気泳動(PAGE)法に前記光学式濃度計を使用した場合の不具合点

引用文献 : 久保田亮、井上郁夫、小倉正恒、小泉智三、藤井隆、野田光彦 : 心筋梗塞発症体質と膵炎発症体質患者における脂O質異常症例に対しポリアクリルアミドゲルディスク電気泳動法を用いた新病態分類法(改変WHO分類法)による試み:日本体質医学会誌、Vol.81No.1.図4より転載 2019
この図をご覧になり、不透明なバンドを持つポリアクリルアミドゲルディスク電気泳動(PAGE)法の濃度計に 光学式濃度計を使うと脂質異常症の診断を間違う恐れがあることを確信して頂けたと思います。
幸いにも現在登録衛生検査所で光学式濃度計による受託検査機関は無くなっていますのでご安心ください。
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