第17報 心筋梗塞や動脈硬化になりやすい人の特徴

心筋梗塞や動脈硬化になりやすい人の特徴

第14報、15報は医科向けの脂質異常症の判定基準でした。第16報ではなぜ脂質異常症で動脈硬化や心筋梗塞が起こるのかについいてわかりやすく説明します。

第1報でなぜ酸化LDLが心臓の冠動脈に集まりプラークを作るかを世界で初めて発見し特許を取得したことを報告しました( 特許第6454950号、第7報)。

すでにアポBのC末端が酸化された場合、マクロファージがそれを異物として貪食(捕獲する)ことはすることは知られていましたが、いつどこでアポBのC末端が酸化されるのか等は解っていませんでした。それは、リポタンパク質の測定が超遠心分離法しかなく思考が止まっていたためと推測しました。そこでポリアクリルアミドゲルディスク電気泳動(PAGE)法がLDLの粒子径の順に泳動され、その現象を可視的に捉えること(第12報 第14報)に着目し易酸化LDLの存在を発見(第5報)し特許を取得しました(第7報)。

以上の結果動脈硬化による心筋梗塞の発生原因は、人類が獲得したコレステロールを得るためのシステム (アポB-100とアポBレセプターによる LDL利用システム)の負の遺産が原因であることが明らかになりました。

ポイント: 逆にこのコレステロール大量使用の恩恵が人類の脳神経系の発達に大きく貢献したことは間違いない(第8報後半参照)。
それは人類以外の動物にこのLDLシステムが殆ど無く(授乳期にLDLが現われるのみ)動脈硬化による心筋梗塞が-殆どない点はこれを裏付ける根拠となっています。

LDLシステムの負の遺産の説明

◎ FH(家族性高コレステロール血症)患者は若くして何故心筋梗塞になるのですか?
ポイント:心筋梗塞になる原因は、酸化LDLの蓄積によるものであるという現象が明らかになっており (特許第6454950号、第7報)、FH患者もそうでない患者も冠動脈へ酸化LDLの蓄積であるので、ここでは敢えて典型的なFH患者の例を挙げて説明します。

FH患者とは遺伝的に全身の細胞がLDLを取り込む鍵と鍵穴の異常(第9報参照)、すなわちアポBのC末端またはアポBレセプター部分の遺伝子のどちらか(ヘテロ型)またはその双方(ホモ型)が異常な場合、LDL粒子を組織の細胞が取り込むことができないためLDL粒子が血中に大量に蓄積する疾患です(LDL粒子の量を表す言葉が無いためLDLコレステロールが異常に蓄積すると表現されている) (前第15報 参考文献2 参照)。

その結果 ⓵アキレス健肥厚、②皮膚の黄色腫等が出現する他、若くして心筋梗塞になりやすいと言われており厚生労働省指定難病79となっています。

なぜFH患者は、若くして心筋梗塞になりやすいという理由は以下の通りです。
まず、最初に明確にしておかなければならない点は、LDLコレステロールが酸化して動脈硬化巣に溜まったわけではありません。酸化したのはあくまでアポB100のC末端をもったLDL(汚れた服を着たLDL)粒子そのものです。(第3報参照)。

厚生労働省指定難病 79

全身の組織細胞はどうしてもコレステロールが脳神経系を始めとして組織の細胞膜やホルモンの原料として大量に必要なので(前記: ポイント参考)、一生懸命リパーゼを産生しLDL粒子のアポBのC末端を覆っている中性脂肪の膜をはがしLDLレセプターに結合できるように働いています(第5報 : 易酸化LDL=活性化LDLの発生 参照)。

しかし細胞に取り込まれなかった易酸化LDLは、血中を循環している活性酸素でアポBのC末端が酸化された場合、各組織細胞のLDLレセプターに結合できず血中をさまよい続けた結果、第3報で述べたマクロファージに取り込まれ炎症のある動脈内皮に蓄積し粥状動脈硬化を起こします(心臓の細胞は休みなく働き続けているため傷つきやすいのかも知れない)。

すなわちこの酸化LDLをマクロファージが冠状動脈の傷を炎症と間違え酸化LDLを持ったまま内皮膚細胞に際限なく取り込まれたものと思われます(粥状動脈硬化の発生: 血管の内皮膚細胞に「膿(ウミ)」が溜まった状態)。
この現象は傷がある血管なら全身どこにでも動脈硬化は起こることを意味します。

従って動脈硬化は心筋梗塞ばかりではなく頸動脈やその他の血管に発生することがあります。