誰でもできる脂質異常症のWHO型判定と弊社PAGE法のWHO型判定表

誰でもできる脂質異常症のWHO型判定

リポ蛋白分画測定法 (PAGE法) は、脂質異常症の病態であるWHO型判定(Ⅰ、Ⅱa、Ⅱb、Ⅲ、Ⅳ、Ⅴ型)を容易にするための分析方法で、かつ小粒子LDL(small dense LDL、sLDL) が検出できる保険収載された唯一の測定法です(80点)。ところで今までのWHO判定法は、抽象的で新しい検査法に対応できず、リポ蛋白質をより難しくさせ、この分野の発展を遅らせていました。

最近久保田らは、WHO判定を簡単にできる方法(下記表1)を提案しました(参考文献 1)。これによると心筋梗塞は、コレステロール値が高いからという過去の神話を見直さない限り撲滅できないということを暗示しています。

心筋梗塞は、コレステロールが正常値の人や低めの人にも結構発生しているので、これらの解明が心筋梗塞や脳梗塞の撲滅につながると考えられます。すなわち心筋梗塞は、LDLコレステロール値が高いから起こるというものではなく、下げなくてはならない人と下げなくても良い人がいることがわかってきました。これは小粒子LDLの出現機序の研究で明らかになりました(特許公報第6454950号)。

特許(特許公報第6454950号)解説

小粒子LDL (small dense LDL)の出現機序は長らく謎でしたが、「小粒子LDL自体が、動脈硬化の原因物質である」という多くの論文の主張が崩れていることが明らかになりました。 理由は、心筋梗塞の手術や腎透析開始時、大量のヘパリンが投与されその直後、小粒子LDLが大量に出現する事実を見逃していたことにあります。また 「小粒子LDLが酸化されやすい」は、分取した各LDL中のビタミンEと脂肪酸を人工的に酸化させた論文を引用したものでこれが判断を狂わせていたのかも知れません。

本特許は、小粒子LDLの出現が、リパーゼ等 (LPL,PL,HTGLを含む)により発生することを追認するとともに、この水解の過程で不安定になったLDLのapoB100のC末端が血中で酸化され、LDLレセプターに取り込めず、マクロファージがこれを動脈硬化巣に運んだ結果、動脈硬化が進展したものであると主張した。この不安定なLDL(酸化LDLではない)は極微量で測定できませんが、リポ蛋白分画 (PAGE法) で、この不安定なVLDL、LDL(易酸化VLDL、LDL)を測定することができることから、心筋梗塞の起こりやすい患者を発症前に検査し予防することができるという主張です。言い換えると、PAGE法に出現する小粒子LDL を詳しく調べれば、心筋梗塞を予防できることになります。

悪玉のコレステロールはもはや神話

さて、コレステロールに悪玉や善玉があると信じられていますが、悪玉(LDL)や善玉HDL)中に存在するコレステロール(Cholesterol estel)は化学的に同一です。リポ蛋白質は、コレステロールと中性脂肪、リン脂質をアポ蛋白質で覆われたったカプセルのようなもの (カイロマイクロン、VLDL、LDL、HDL) で、赤血球の 1/100~1/1000サイズの球状で血液中に浮かんでいます。VLDLとLDLの一部はすべての細胞に栄養素として取り込まれ、LDLの大部分とHDLは主に肝臓に取り込まれます(コレステロールの再利用)。各細胞がリポ蛋白質を取り込む際、必ずレセプター(受容体) が必要で、酸化された VLDL,LDLは、このレセプターを介して取り込むことができません。動脈硬化巣に酸化LDLが集まっているというのは、レセプター以外の経路 (前述のマクロファージ) によって運ばれてきたものです。

ところで元々HDLコレステロールは、生化学自動分析装置で簡単に定量することができる上に、LDLコレステロールも直接定量することができますし、Friedewaldの計算式(F式)で計算することもできるので、敢えてコレステロール分画をする意義が、今問われています。

ご注意!!

最近リポ蛋白分画 (HPLC 法)が出現してきましたが、実質的にコレステロールを測定しており、まぎれもなくコレステロール分画です。その上、小粒子LDLの存在を知ることもできません。このHPLC法によるコレステロール分画では、VLDL分画の約 80%を占める中性脂肪を反映できないので、事実上WHO型判定を行うことはできません。動脈硬化学会のガイドラインにはコレステロール分画をしなければならない理由が書かれておりません。