脂質異常症(高脂血症)におけるWHO型の判定は、1990年前後に提唱された診断法ですが、判定基準に明確なガイドラインがありません。そこで埼玉医科大学 井上郁夫教授と共同研究し、数値化した簡易判定法を考案しました。本法は、リポ蛋白分画値(PAGE法、画像式)と総コレステロール値から脂質異常症の判定ができます。
参考文献:井上郁夫:家族性複合型高脂血症(FCHL)、別冊日本臨床、新領域別症候群シリーズ、No.20、先天代謝異常症候群(第2版下)、63-78、2012.12.29発行
リポ蛋白分画(分画%) | 総コレステロール (mg/dL) |
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VLDL | IDL | sLDL | HDL | その他 | ||
Ⅴ型 | 30以上 | ― | ― | 10以上 | ・HDLのOD≦0.03 ・IDL、LDL、sLDLのOD≦0.1 |
― |
Ⅳ型 | 20以上 | ― | ― | ― | Ⅴ型、Ⅲ型、Ⅱb型でないこと | ― |
IDL増加を伴うⅣ型 | 20以上 | 10以上 | ― | ― | Ⅴ型、Ⅲ型、Ⅱb型でないこと | ― |
sLDL増加を伴うⅣ型 | 20以上 | ― | 5以上 | ― | Ⅴ型、Ⅲ型、Ⅱb型でないこと | ― |
IDL、sLDL増加を伴うⅣ型 | 20以上 | 10以上 | 5以上 | ― | Ⅴ型、Ⅲ型、Ⅱb型でないこと | ― |
Ⅲ型 | 30以上 | 10以上 | ― | ― | LDL、sLDLのOD≦0.1 | ― |
Ⅱa型 | 15未満 | ― | ― | 33未満 | ― | 220以上 |
Ⅱb型 | 15-25以内 | ― | ― | 33未満 | ― | 220以上 |
Ⅰ型 | ― | ― | ― | ― | IDL、LDL、sLDL、HDLのOD≦0.03 | ― |
特許:第6019288号
リポ蛋白分画(ポリアクリルアミドディスク電気泳動法)「リポフォーAS」では、濃度波形又は泳動像からⅠ型、Ⅲ型、Ⅴ型脂質異常症を判定できます。この簡易判定法は、VLDL分画%がTG(中性脂肪測定値 )と相関がある、リポフォーASを用いた場合にのみ使用できます。判定には下記の手順を参考にしてください。
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Ⅴ型
- (a) VLDLの分画%が30%を超えていること 。
(b) HDLの分画%が10%以上あること。
(c) VLDL、HDLを除くLDLのピークが、吸光度0.1以下であること 。
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Ⅰ型
- Ⅰ型の患者は非常に少なく、カイロマイクロンが多いため乳ビ血清である。
「リポフォーAS」の泳動ではHDL及びLDLは殆ど検出されない。
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Ⅲ型
- (a) VLDLの分画%が30%を超えていること 。
(b) IDLの分画%が10%以上あること。
(c) LDL、sLDLの分画ピーク値の吸光度が0.1以下であること。IDLがLDLより有意に高い。
検査報告書には「Ⅲ型の疑いがあります」と記載されます。なお、アポ蛋白E表現型(E2)の検査による確認が必要です。
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Ⅱa型
- (a) VLDLの分画%が15%未満であること。
(b) HDLの分画%が33%未満であること。
(c) TC(総コレステロール)の測定値が220mg/dL以上あること。HDLの分画%が33%の場合、検査報告書には「HDL分画%値が高いのでⅡa型の判定を保留します。」と自動的に記載されます。
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Ⅱb型
- (a) VLDLの分画%が15~25%であること。
(b) TC(総コレステロール)測定値が220mg/dL以上あること。
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Ⅳ型
- (a) VLDL分画%が20%以上あること。
(b) Ⅴ型、Ⅲ型、Ⅱb型でないこと。以上に加えて、Ⅳ型には、IDLやsLDLの存在を考慮して、次の3種類の判定ができます。
(1) IDLの増加を伴うⅣ型: IDL分画が10%以上あること。
(2) sLDLの増加を伴うⅣ型: sLDL分画が5%以上あること。
(3) IDL,sLDLの増加を伴うⅣ型: IDL分画が10%以上ありかつ、sLDL分画が5%以上あること。